“人の数だけ歴史がある”




普段はやさぐれた表情で教壇に立つ日本史の教師が、その発言の時だけ身に纏う空気が変わったのを新崎は感じ取った。




馴染みのない偉人の名前や偉業の数々を並べ立てる退屈な授業が、その日から変わった。




“積み重ねた重みがそこにあった”




授業終了10分前。




何故、声色を変えてまで目の前のスーツは演説を始めたのか。




チラリ、新崎は体操着で校庭を走り回る集団に横目をやる。




窓際には、一輪の花を挿した花瓶が昼の光に寂しく照らされていた。




“君たちは、その重さが消えることもあると理解した”




シャーペンが紙の上を走る音が止んだ。49名全員が耳を傾けていることが、教室の空気を吸うことでなんとなく新崎は理解した。




“しかし、史実は残り、君たちの今後の人生に少なからず傷跡を残すだろう”










“そんな君たちに一つ、問いたい”








“学校で!!!!!職員室の!!!!!!面前で!!!!!”







“エロ本を読むとはどういうことだ!!!!!!!!!!!!”


解説しよう!

“人の数だけ歴史がある”とは!犯人がエロ本を読むに至った経緯に対して理解を示していることを伝えたかったのだ!

“積み重ねた重みがそこにあった”とは!何を積み重ねていたのか、君ならもうわかるな?


“君たちは、その重さが消えることもあると理解した”とは!ちょうど今日は燃えるゴミ回収日だったことから明白だ!

最後に!

“しかし、史実は残り、君たちの今後の人生に少なからず傷跡を残すだろう”とは!

犯人の名前が職員室のブラックリストに記載され、その周りの人間にも少なからず影響していくだろうことを伝えて今後このような蛮行が起こらないよう釘を刺したのだ!





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